素敵な事

まあなんですか、子供の頃からなのですが、そんなに甘いものを欲さない質で、大きくなってまあ食べれんことはないぐらいにはなったけれども、ケーキバイキングなど行ったこともないし、洋菓子だと頂いたのを(勿論有難く頂戴しますが)1日1個食べるか食べんかくらいの消費量なのですが、習い事のお蔭か、和菓子は割と食べられるようになった。昔は祖母の作った粒餡しか受け付けなかったのが、やはり1個が小さいということもあるのだろうか。ただ、全身餡の塊のようなものや煉り羊羹などはまだまだ食べるのに労を要するので、和菓子を制覇したとは言い難いし、甘くないにこしたことはないのだけれども。しかしながら、特に生菓子のその美しさや繊細さ・あんな小さい中に単純化されて凝縮された物語(俳句みたいである)・その季節にしか会えないというときめきなどに、いつも心動かされるのである。

そんな和菓子を、作ってみようという講座が開かれた。
洋菓子を上手に作られる方は本当に大勢おられるが、家で和菓子を作る方は少ないのではなかろうか。
和菓子作りの本も出てはいるが、実際に教えてもらえるものなら、その方が断然有難い。わたしとて、あんこくらいは作れるが、今回は月うさぎと名前のついた生菓子や、落雁も作るのだということでわくわくする。興味のある方が多かったのか、すぐに定員いっぱいになって、参加できない方もいたようである。

月うさぎとは、白玉粉・砂糖・水を練った生地で白餡を包み、色粉をつけた爪楊枝で目や耳を描いた、可愛らしいお菓子であった。生地を作るのに多少苦労したが、その生地は苺大福にも使え(他にもバナナやぶどうを包んでも)、餡を包んで抹茶の粉をかければうぐいす餅にもなるという、万能生地とのことだった。思っていたより簡単で驚く(簡単なものを先生が選んでくださったのだけれど)。落雁も、季節に合わせて稲穂や桔梗を作る。型から外すのが少し難しかった。
それでもあっという間に3種類ものお菓子が出来上がり、お茶を頂きながら、みんなで出来たてを味わった。これなら家でも作れるかもしれない。和菓子は大抵冷凍しておけるので、多めに出来ても慌てるこたあないし、お客さんがある時用に和菓子を常備してあるなんて、ちょっと素敵な人っぽいではないか(まあ来んけれどもお客さん)。

身近にこんな講座が開かれるなんて、大変に嬉しいことであった。
これでまた少し、お菓子と仲良くなれたのではないかな。

     

人生は
時々
どきどき
する


世の中には実に様々なお仕事がある。
自分自身もいくつかアルバイトはしたが、それ程沢山の業種ではない。この先も出会うことのない、または知らないままの職業は相当沢山あるのだろうと思うきっかけとなった出来事のお話なのですけれども。

ピアノの譜めくりをしませんかと言われたのは、5日前のことであった。譜めくり自体は勿論見て知ってはいるけれど、まさかこんなど素人ができることではないでしょうに!と申し上げたのだが、めくりが必要なのは2・3曲で、頼めそうな人がいないと大層困っておいでだったので、こちらも大層不安ではあったがお引き受けすることにした。したけれども、ピアニストのそばにいて楽譜を必要なページへめくる譜めくりという役割は、それをすることによってピアニストが助かるから存在するのであって、却って弾きにくくなってしまったら、何の意味もないどころかただの迷惑な人でしかなく、まともにピアノの譜面も読めないのにいいのだろうかいいのだろうかと悩みながらも、この先譜めくりをする機会なんてきっとないだろうしなあという気持ちもあり、当日着る服がなかったので急遽あちこち失敗しながらも1枚ワンピースを縫い、その日を待った。

わたしがフメクリストとして参加したのは、トランペットとサックスにピアノが加わった3人編成のコンサート。真庭市内の中学校や福祉施設など4箇所を回られるミニ公演をお手伝いすることになった。
当日、譜めくりのやり方をピアニストの方にお訊きしなければならない程何も知らないことに愕然とし、本当に受けてよかったのかと指が冷たくなる程緊張しながら出番を待つ。楽譜を目で追いながらめくる箇所近くになると立ち上がって、左手を伸ばして右ページを持ち、ピアニストの方が頷いて合図をくださるとさっとページをめくる。というのが譜めくりの仕事だが、楽譜を追うのも必死、どこで立ち上がってよいかわからず、次のページを指でつまめず大いに焦るし、どのくらいのスピードでめくってよいかもわからない。伴奏はすっかり頭に入っておられるのだけれど、弾きながら、トランペット・サックスの方の様子を見ながら、わたしに合図まで出されるなんて、しかも相手は今日初体験の素人で、やはりご苦労を増やしてしまったのではと申し訳ない気持ちになる。
その日2回目の公演では最後のページをめくり忘れ、着替えがないから2日同じ服を着ないといけないにも拘らず、腋がびしょ濡れになる程の汗をかいた。
次の日の1回目の公演でもめくり忘れがあり、終わってからピアニストの方に謝ったところ、前の日よりめくるのが上手くなって、とてもやりやすくなった!と言われ、本当に嬉しくテレサ・テン、泣き出してしまいそうであった。夜の公演では、これで最後なのだから絶対にめくり忘れないと固い決意を胸に臨み、なんとか失敗なく終わることができた(と記憶しているが、緊張のために記憶が改竄されていないことを望む)。エスパスホールで開かれたこの公演は特に、(わたしがなんとしてもめくり切る!と近くに座ったせいかもしれないが)ピアニストの方の息遣いが聞こえ、空気で緊張と音を感じているような感覚があり、より心に残るものであった。

次の日は、一般の方に向けてのコンサート。
わたしもお客さんとして、演奏される3人の方を初めて正面から拝見。サックスの方の循環呼吸(楽器で音を出しながら鼻から息を吸うという演奏法。練習すれば誰でもできると仰るが・・)に仰天し、美しい曲を心ゆくまで堪能した。トランペットの方がいらっしゃるということで、地元真庭の消防団のラッパ隊の皆さんとの共演もあり、エスパスホールに響くラッパの音はものすごい迫力であった。それでもやはり、ついついピアノの方に目が行き、楽譜が頭に浮かんできて、そろそろ次のページ・・などと不必要に緊張してしまうことしばしばであった。

大変に貴重な経験をさせていただいたものである。
最後にはピアニストの城さんに褒めてもいただいて、少しでもお役に立っていたのだったら本当に本当に嬉しい限りです。
この歳になっても、世の中知らないこと・初めてのことだらけだと痛感すると共に、フメクリストとしてのキャリアが新たに加わった(かもしれない)のでありました。

 
     
アズサ
ちゃん
彫刻展

ひと月ある展示会でさえ、あっという間に日が過ぎて、行けなかった!ということがある。
見逃したくない作品展は、早く行くに限りますということで、勝山文化往来館ひしおホールで始まった、勝部梓さんの彫刻展に行ってきました。
以前岡野屋旅館プロジェクトにも参加された勝部さんは、今年7月から勝山に滞在し、展示会に向けて公開制作をされていました。完成したその作品の他、木目とノミの跡の美しい、その跡に指を這わせたくなるような大きな・小さな作品がおわしまします。驚いたのは、会場に入った瞬間に、うわーっと木の香りがしたこと。気持ちがすわーっとなりました(伝わるのか?)。「生きている」という感じを受けました。
それぞれの作品からイメージしたスケッチも展示されていて、ただただ上手だな〜と嘆息するばかりでした。本当に上手なのだもの。構図も美しいし。勝部さんも可愛らしいし。

展示会は10月5日迄。4・5日は、勝山で開かれるクラフト市に参加、箸置きを作るワークショップをされるそうです。
勝山の材を使い、勝山で生まれた作品を観に、是非勝山へ。
やはり木というものは、ほっとしますな。

 



     

 

 

 


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