わたしのお気に入り

姥百合(うばゆり)という花がある。
花屋さんにある百合や、あちらこちらに種を飛ばして増えるテッポウユリなどとは様子が少し違っていて、ツヤツヤした広い葉っぱが、下の方にわさっと生える。その真ん中から太めの茎がずいと伸び、上の方に付く花は、花びらの先が盛大に広がらない誠に控え目な咲き方をする。
夏、山の奥の方の神社へ向かう参道でその涼しげで神秘的な姿を見て以来、姥百合がそれはそれは好きである。
何年も前、ご近所に住むこれまた大好きな方に姥百合の話をしたら、うちに生えとるでと言って、種を分けてくださった。咲き終わって、中にぎっしり種を蓄えたその形も大変素敵で、しばらく飾っていたのだが、数年前、中身の種を試しに蒔いてみることにした。半日陰の湿り気のある場所を好むので、谷のようなところにある水はけの悪い畑の、山寄りの端っこの方に蒔いた。なんぼでも増えるでと言われていたので、姥百合の群生を想像し、うっとりしながら次の夏を待った。
梅雨がそろそろ終わろうかという頃、種を蒔いた辺りにツヤッとした葉っぱ数枚が伸びていた。姥百合では・・と思い、その辺の折れた枝などを周りに挿して囲っていたのだが、他の草の尋常ならざる成長に押されたか、囲いの木が倒れて他の草と共に刈られてしまったか、その年は姥百合の花を見ることはできなかった。
葉っぱは見たけど花は見ずを繰り返すこと2〜3回。
多少諦めモードには入りかけていた今年、遂にわたしが初めて見たときの姿で、うちの畑に姥百合が見事に咲いてくれた。しかも2本。
目には見えず、あ!今姥百合が芽を出そうとしょうる!などと感じることもできないが、静かに、何年もかけて、わたしの気付かない所でゆっくりと、姥百合は根づこうとしていてくれたのだなと、胸を熱くしながら花を眺めた。
この秋はうちの姥百合の種を持って、今年初めてやっと咲いたよと、種をくださった大好きな方に、ご報告に参りたいと思います。

     

夏の
思ひ出


両親が暮らす地区の花火大会に行くため、姉親子も帰ってくるというので、わたしも久々に行くことにした。
割とよい花火をあげるので、県内の情報誌にもしばしば取り上げられお祭りである。
急いで出たつもりだったが、花火打ち上げ時間の1時間半以上前にも拘らず、会場までの道は渋滞。これはもう停めるとこないかもなあと、車中で広島の広陵高校が逆転負けした試合を観て泣きそうな程のダメージを受けた姉とわたしは、更に悲しい気持ちになったが、当てもなく車で彷徨っていると、たまたまそこを歩いていた役場の方が、ここなら停めれますよと誘導してくださった。静かに広陵戦の痛手をも慰めてくれる如き思いがけないご親切に大変感激した。

見事な花火を存分に堪能したあと帰ろうとしていると、姪がどうしても芋をボール状にして揚げたんだかなんだかとかいうものを買わなければ気が済まないと言い出したので、その屋台の前で小人の1人を抱えて待っている時のことだった。ふと、少し遠慮がちに名前を呼ばれて振り向くと、中学の同級生が子供さんを抱いて立っていた。
わー!久し振り!びっくりしたー!
よくある久々の再会の場面のようで、わたしにとってはかなり特別なものであって、なぜならわたしはずーっと彼女に会いたかったのである。
中学で一緒になった彼女は、常に一緒にいるような特別な仲良しではなかったが、同じ部活だった他に、なんとか委員などで一緒になったり、話す機会は多かった。頭が良くて勉強ができて、聡明という言葉そのもののような人で、大騒ぎするタイプではなく穏やかで優しくて真摯で冷静で、その点で彼女自身思うことはあったかもしれないが、わたしは彼女の纏う静かな明るさのようなものがとても好きだった。彼女と喋ったり、時々ちょっとふざけたりするのが好きで、恋とか愛とかではないが(或いはある種の愛かもしれんが)、周りとは何か雰囲気が違っていたせいか、彼女は特別な存在の人であった。
高校も同じところへ行ったが、生徒数も多くクラスも違って、何よりなるべく学校から遠ざかろうと終わるや否や飛んで帰っていたのだから、顔を合わす機会が殆どなくなってしまったのも致し方ないことであった。卒業しても、どうしとるのかなあと時々気になっていて、成人式か同窓会の時に、彼女からある職業に就くべく勉強中で参加できない旨の返信があったことを知り、なるのも難しく仕事の内容も大変なその職業を選んだ彼女を、さすが・・と思い、会って声を聴きたいなあと思った。
それからも、なぜか時折ふと、どうしょうるかなあ会いたいなあとずっと思っていたのである。
その彼女に会えた。20年近く振りに。会いたいなあと思いつつ、会える日のことは想像だにしていなかったかも。今どこにおって、夏休みに帰って来とるというような話をして、元気でな またねと言ってお別れをした。

会えるものなのだなあ・・・不思議で、とても嬉しくて、彼女がわたしに気付いてくれたのがまた嬉しくて、大変満ち満ちとした心持ちで家路へ着いた。彼女に感じていたものはなんだったのか。落ち着き・・安心感・・彼女の考えていることを知りたかったのか・・未だにわからないけれども、花火観に行ってよかったなあと、また会いたいなあとやっぱり思った。

なんだろう・・書いていたら(中間部とか特に)えらく深刻な重たい感じになってきたような気がするが(20年近くもずっと思よったんかいという気持ち悪さも手伝ってか)、全然そんなんではなくて、とってもハッピーでライトネスな、同級生に会えて嬉しかったよ!ちょっと特別版!ぐらいの楽しい花火大会の思い出ですよ的なお話なのでありました。



 
     
夏の
終わりの小旅行

突然(2日前の夜)お誘いがかかり、広島へ行くことになった。
MAZDA スタジアムで行われる広島カープ対阪神戦を観るために。

本拠地が市民球場からスタジアムに替わり、そのスタジアムが寝転んだりバーベキューをしながら観戦できると話題になって、へ〜と思ってはいたのだけれど、そこへ実際行って野球が観られるとはなんとも楽しみではないか。折しも少し前に深夜のテレビ番組で、MAZDA スタジアムの見所を紹介しているのをたまたま観たとこだったのだ。しかもお隣りの県なのに、実は広島に行くこと自体初めてで(通りはしたが)、カープ観戦がわたしの広島デビューとなったのである。

バスの中でカープの歴史を学びながらファンの聖地へ。
スタジアムのそばには赤いローソンがあり、好きじゃわ〜こういうのと思う。スタジアムの周辺には赤い人たち(カープファン)と縞縞黄色の人たち(阪神ファン)がゾロゾロと歩いていて、自然と高揚してくる。
バスを降りてからユニフォームを貸していただき、俄カープファンのいでたちに。
ショップでは、膨大なグッズと仰山の人に面喰らったが、子供用のTシャツやオーバーオールもあって、わたしの愛する可愛い小人達に是非とも着せたくなった。トムとジェリーの赤いTシャツが本当に本当に欲しかった・・・
ゴリラのオブジェ(?)と写真を撮ったりしながらぐるりと場内を周り、3塁側内野の指定席へ行くと、えっこんな近いの!?というくらいグラウンドも選手もすぐそこで、かなりびっくりした。プロ野球の試合は東京ドームと神宮球場でしか観たことがなくて、東京ドームではいちばん安い外野の自由席(立ち見だったか?)で観たため、とにかく選手が遠くて小さかった印象しかなかったので、余計に興奮してしまった。

今回、広島での大規模な土砂災害をうけて、ラッパなどの鳴り物を自粛した試合だったが、2位阪神との対戦でもあったせいかチケットはほぼ完売だそうで、スタジアムはカープファンで真っ赤に染められていた。前の試合で完封したマエケンさんが、ファンから「カープが勝つことが支えになる」というようなコメントを貰い、被災した方々のためにも絶対に勝ちたいという気持ちで投げたという内容の記事を新聞で読んだが、なんでもかんでも不謹慎とか自粛すべきとかで試合を中止したり、静かにしとけばええというわけでもない面もあるよねと考えた。

果たして、声援届かずこの日のカープは逆転負けを喫し、偽装ファンにも拘らず試合内容にはがっくりきたが、相当久々の野球生観戦は非常に楽しく、満足でありました。もっと声を出して選手を応援したかったのだが、ちょっと前聴いたラジオで、フェスでの迷惑な行為として大きな声で歌うというのが挙がっており、RADWIMPSのライブで大騒ぎをしていたわたしはがーんとなって姉にそれを話したところ、姉もRADWIMPSのファンの人たちのネット上の集まりのようなところで、大声で歌う人に対して「あなたの歌を聴きにきたわけではない」とのコメントを見つけがーんとなっていたようで、2人とも打ちのめされていたのだが、野球観戦に於いても、そういった暗黙のタブー行為があるのかしらんとすっかり怯えてしまい、最後散々に打ち込まれた横山にしか声を掛けることができなかった(わたしが呼んだところでどうにかなる事態ではなかったけれども)。あんなものすごい人の中で自由に大きな声が出せないのなら、もう1人でカラオケに行くほか手はなさそうだと思った以外は大変楽しい体験で、誘っていただいて本当によかった。今度もしまたスタジアムに行けたら、もっとゆっくり中を見て、どんな食べ物屋さんがあるかも全部見て、トムとジェリーの赤いTシャツを手に入れたいと思います。

 

 

夏の終わりの悪あがき

あせもにまでなりながら沢山汗をかいたせいか、多少なりとも食べるものに気を付けたせいか、去年の夏に穿いてから、入らなくなっていた半ズボンが、やっと穿けるようになった。

が、しかし。夏が・・終わる・・・

来年は、もう2ヶ月程早くから危機感を持って過ごすことを決意した。

     

 

 

 


Copyright © 2009 matsuda shiro All Rights Reserved