緑と不如帰

畑からの帰り、いつもの坂を下りながら、思わずわあと声をあげた。
結構な勾配のその坂道を下りる時、丁度テーブルを挟んで向かい側に座ったように、正面にずおんと山が居る。その眼前の山がいつの間にかすっかり濃い深い緑になっていた。こんなにもう濃いかったんか・・・もう6月なんじゃなあ、夏がくるなあと思いながら風呂なんぞに浸かっていたら、今年初のホトトギスの声が聞こえたりして、あらまあと嬉しくなりつつ、少し前親戚のお姉さんに「私たち春でも夏でも70回とか80回しか経験できないんだよ。もしかしたら4〜50回かもしれないし。一生に桜は70回程しか見れないんだよ。」と言われたことが思い出され、自分はあと何回、濃い緑の山を見て、ホトトギスの声を聞くのだろうなあと静かに思った夜でした。

     
よく通った道を再び。

企画展終了後、初めて(といっても2週間しかたってないけど)piatto nono さんへ行きました。
先月末から田渕智也さんの個展『TOMOYA WORLD』が開催されています。
落ち着いた雰囲気で大人な感じ・・・
自分の展示も、わりと皆さんに落ち着いた感じだと言われたけれど、隠したつもりの内側のしっちゃかめっちゃかさが、完全に露呈していたのだな・・・と恥ずかしくなるようなシックな空間。本当の落ち着きってこうなのね・・・。黒をバックに泳ぐ金魚も、金魚の色が鮮やかでとても印象に残りますが、白のバックも清涼感と、黒とは違う静けさがあっていいなあと思います。
それにしてもこうも雰囲気変わるのだなあと毎回思うのだけど今回も思いながら、お料理は限定メニューから、nonoさんでは初めて食べるピザを注文。ホワイトソースのシーフードピザ。シーフードピザにはあまり乗ってないのじゃないかしらと思うお魚にあらっと思い、えびのやらかさが激好みで感動。そしてチーズがやたらおいしい。ごま好きとしては食べずにおかれん黒ごまのケーキも食後にいただく。もう見るからにごまがたっぷり。甘いものは別腹どころか、どっちかいうとそれが入る腹は持ち合わせてない方ですけど、甘さ控えめなnonoさんとこのデザートは 大変好き。
頼んだそばから、次来た時これ食べるーとか言い出す食の亡者ですが、ちゃんと絵も拝見しました。ああ、色んな人が色んな絵を描くのねー・・・と今更しみじみとそんな感想を抱いている自分に我ながら軽く戦慄しながら(いや、なんというか、わたしはわたしの絵を描いていこーと思ったということで・・・)。

piatto nono  さんでの個展『TOMOYA WORLD』は来月7月16日(月)まで 開催です。是非お運びくださいませ。
この梅雨の時期、金魚たちに囲まれて、お外に雨なんか降ってたら、まるで水槽の中に居るみたいじゃないでしょうか。あれ、そんなことないでしょうか。

     
単純なことは確かです。

へそまがりだと言われれば否定はせんが、別に賛成されようと反対されようと、自分がやろうと思ったことしかしないだけで、西城秀樹の如く、やめろと言われたら余計に燃え上がるタイプではないけども、森山良子ばりに、禁じられても行きたくなるのがFabrique451さん。
待ちに待ったオカベマキコさんのブレスレットが入ったよというお知らせの際、なにぶん遠いからお店に来るのを宿題にしないでと仰ってくださっても、丁度お届けものもあったりするしーとか、なんぞれかんぞれ理由をつけて好いた人に遭遇する機会をどうにか作ろうとするみたいなもんでして。とはいえ先生に恋する小学生並みに、岡山市内はわたしにとって遠い存在。なにしろまだ1人で運転してお店に辿り着いたことがない。やはり車が多いのがいちばんの恐怖。誰か誘おうにも平日の昼間におう行くぜと言う人などおらず、どうしたもんかと悩んでいると、行こうと思った時が行き時(どき)よと言われ、1人で行くのだから少々寝坊したってかまわんし、ゆっくり行って早めに帰ればええじゃないのと、震えるひざを押さえ立ち上がることを決意。
当日まずは車の中で食べながら行こーと(理由をつけて)タルマーリーさんでパンを買う。15分程車を走らせた時点で引き返そうかと弱気になる自分を励ましながら、幸い車も少なくて、ひどく怖い思いもせず初めて単独走行に成功。無事Fabriqueさんに着いた時には思わず奇跡と呟いた。
思いがけずFabriqueさんとおいしいお茶をいただきながらお話もできて(仕事の邪魔をする小学生)もうすっかり岡山に来れたことが嬉しくなって、例の如く時計を見ないから何時間経ったのかも気付かず(迷惑をかける小学生)Fabriqueさんにもう帰らなきゃねと心配されつつ(気を遣わせる小学生)、帰り際にはnonoさんでの企画展へ遠く倉敷から来てくださった方と再会するという更に思いがけない出来事も。
いつも仲良くしてくださるご近所の方が確か6月生まれだったはずーと、小さなお菓子&アリムナさんのルバーブジャムをプレゼントに携え、いつもながら名残も尽きねど帰途へ着く。2分程走った時点で、なぜ自分にルバーブ&レモンジャムを買わなかったのか!!と激しく後悔。よほど引き返そうかと思ったが、2車線の道路をUターンする勇気など皆無であれば、車の波に流されるまま泣く泣く北上したのであった。
ただ雨もなんとかもってくれ、日も長くなったおかげで明るいうちに帰りつき、家の近くまで戻ってきた時には、心の中で再び奇跡!と叫んでしまった。1日のうち2度も奇跡が訪れるとは。
オカベさんのブレスレットはもう残り1つだったので注文したし、Fabriqueさんお薦めのゴーリーの本もお願いしたし、あーこりゃまた行かねばならんということだなあ、どうも。

とたった1度の成功にええ気になって、新卒だったら10コ程しか歳違わんし、今は小学生だけどきっとすぐに大人になるし、先生ともっと仲良くなって、そしたらそのうち・・・なんて、これからの道程にどんなことが待ち受けているかなど思いもせず、淡い夢を抱く単純な小学生なのであった。

(と、そうこうしている内に超速で451BOOKSさんからFabriqueさんお薦めの本『うろんな客』が届いてしまった!なんなのだ!なんとイカした本なのよ!もう毎ページ爆笑!訳がほんまに素晴らしい!ああ、たまらん!「客」に会いたい!わーもーわたしも即お薦めする!!451BOOKSさんありがとうございましたー!!ゴーリー凄し・・・)

   
 

 

働く店
その2

とにかく、やろうと思っていること途中になっていることを片っ端から済ませていくと決め、ゴールデンウィーク明けたら行きますーと言いながら(まあ明けには違いないが)6月も数日で終わりという時期になってやっとお邪魔したのは、ウッドカービングのワークショップ。
既に過去2回体験し、木でブレスレット・イヤリングを作ったが、前回2度目の際、どこの時点でかスイッチが入り、手は疲れ、なんなら眠気も催しているのに作業が止まらないというカービングハイ状態になり、なんだこれ 木ィ削るのってこんな楽しかったんか!と完全に虜になってしまった。

色んな人が色んなものを作りに来られる。指輪・ブローチ・ピアス・ペンダントトップ・コーヒー豆をすくうスプーン・ブレスレットに小物入れ。自分で自分の欲しいものが作れるなんて素晴らしすぎる!と今回イヤリング2個目に挑戦。去年ぐらいから、次こんなん作りたい!と構想を練り、これ作ったら即髪切る!と決めていた程思い続けていたものである。
色々な木の種類があるが、今回ブビンガという赤い木を使いたくて臨んだので、その赤い木を中心に硬くてシックな黒い木、木目がきれいな欅の3種類を使わせていただくことにした。前回はルーターという歯医者さんが歯を削るのに使うような機械でひたすら何時間も削り続けたが、今回は中学時以来何年振り!?の糸のこを使ったり(ほんのちょっとだけ・・・)やわらかくてすぐ削れてしまうブビンガは専ら紙やすりで形を作ったりと、前とは作業が結構違って新鮮な感じ。
作業しながら、ああじゃけん木でもの作るの好きなんかもと思ったのは、木が削れる時のそのにおい。前回は欅のみだったのが今回は他の2種も加わって、それぞれの違う木のにおいにうっとりすることしばしば。

ワークショップを開いているstudio Bissさまは、完成形だけ思い描いてノープランでやって来る素人のああしたいこうしたいに辛抱に付き合ってくださり、じゃあここはこうしようと一緒に考えて進めてくださる。
中学の美術で鴨かなんかを木で作った際、その酷い出来具合に、自分は木を加工できる人間ではないと自ら見限ってから、まさかこうして木をつつくことに没頭するとは思わなかった。

深い赤と黒のコントラストが効いた、大変大振りでエキゾチックな、どこへ付けていくのというイカしたイヤリングが完成。早速その日のうちに暑苦しくなった髪もカット。

唯一の失敗は、今度はヘアゴム用の花か小さい帯留め作りたーい!と、またもやりたいことを増やしてしまったことである。

   
 

 

 
 

 

 

 

 


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