あっち
こっち
県北

少し寒い、雨が降ったり止んだりの中、北東に車を走らせる。途中紅葉ベストシーズンの奥津渓を抜け、向かうはかがみの手づくり市。
開催3回目にしてやっと・・・。木版画家・星さんによると今回は出展も多かったようで、編み物・手づくり雑貨・木工・イラスト・野菜なども。手作りというとなんだかふわっとした感じがするが、そこにあるのは作家さんが手をかけて作った、しっかりとした製品。色々ゆっくり見て回るつもりが、勝山の革屋さん・La crieさまと話して、基 営業妨害をしていたら、思わぬ時間が経ってしまった。 慌てて星さんのカレンダーとポチ袋を入手し、おいとまする(見たかった方のお店を見損ねて、何しに行ったのかと思う)。

手づくり市行くけん1時頃になるかもーと言っておいて1時半に着いた不届き者を怒りもしない懐の深いお友達と共に、現在リレー展『異色系女子展』開催中のpiatto nonoさんへ。
終了直前にすべり込み、いつもの更新の遅さ故お伝えできなかったけれど、トップバッターの水野麻弥さんの彫金作品も素敵だった(大好きなフォーもおいしかったの)。
今回はまたがらりと変わって、店内が今までにない雰囲気。焼物というのも珍しい。どれもこれも質感や重さを触って確かめたくなるのを必死でこらえる。料理は、以前食べた4種のチーズのスパゲチに、魚介が入っているデラックス版だなんて食べんわけにはいかんがねということでそれを。お友達はミートソース。野菜たっぷりスープもその時々で内容が違うので毎回食べたいし、いつも迷う。今雨が大降りじゃけんもうちょっと・・・と言いながら、ついつい長居してしまいました。

手づくり市に行ったせいではないけれど、もう収まるだろうと思っていたもの作り熱はまだ沈静化せず、ミシン糸を買いに行った手芸屋さんで、これこれこれが欲しかったんよーという布を手に入れたもので、まだミシンを踏み続けなければいけないようだなあ。

     
いつだって
突発的

いつ引き金から手が離れるかわからない。
勿論、そうしたいそうしたいと思っているから始めるのだけれど、おそらく我慢しきれなくなるのだと思う。
月イチ行事の如く、またも体調を崩し家の中でよろめいていたところが、いきなり食器棚を開けて食器を出し、物置を開けて衣類を出し始めた。常々片付けたいと思っていたが、始めるとむしろなぜこれを今まで取っていた?と思われるものが次から次へと現れる。
今回は徹底的に、目をそむけないと決め取捨していると、見るからに古そうな瓶が出てきた。15センチ程の瓶の底に、2センチくらいの黒い物体。液体とも固体とも判別できない。ラベルにはなめ茸とあるが、おそらく何かの漬け物か醤油漬け、はたまた劣化した油か何かか。きれいにせねば処分もできず、とりあえず水を入れてふやかすことに。他の片付けをしているうちに、どうやら中身が動くようになってきた。
えっ、 いや、 まさか・・・!!
黒く濁った水中に、浮遊するのは紛うことなき茸ではないか!!
ちょっと待て、なぜこれをこれだけの量捨ておいたのだ・・・
再度ラベルを見直すと、「55.8.1 製造」。
しょ、昭和55年てこと!?同年代のなめ茸か・・・!!
急に親愛の情が湧き上がるのを感じたが、研究者でもあるまいし、これを取っておけるわけもない。
かたや食器棚の中、かたや人間社会の中で同じ時代を生きてきたという事実を憶えておくよと約束し、茸に別れを告げたのであった。

30年前の茸とはなあ・・・
まさか、1955年ではあるまいな。

     
俺を泣かせる憎いやつ

急ぎの用があったのだけれど、雨が降ってはできないもので、明日雨なら新見へ行こうと思い立つ。
ほんまに雨が降るんかなあという空模様だったが、タルマーリーさんのパンと、前日2度目にお邪魔したイル・リコッターロさんのパンと傘を携え汽車に乗り込む。1人で新見に行く時は、きしゃで行くと決めている。運転しないってほんまに楽だ。有難い。贅沢を言えば、午前と午後に1本ずつ増やしてもらえればもっと助かるが、贅沢だろうから黙っておく。
わたしが新見に行くとなったら9割新見美術館。今回は平松礼二展。文芸誌の表紙も描いておられた方で、大好きな画家の1人。いつ行けるか機会を逃しはしないかと、始まってからは気が気でなかった。
お昼前、雨が降り始めた新見に降り立ち、まず向かったのはこれも外せぬお肉屋さん。コロッケ2種とミンチカツを購入し、美術館へ。高台にあるので見晴らしがよく、城山公園や山々、美術館のお庭の紅葉を愛でつつ、持ってきたパンに揚げたてのコロッケをはさんで食べる。これがやりたかったのだ。最近肉への消化が追いつかないようで敬遠しがちだが、ここのミンチカツは食べずにおれぬ。パンとコロッケを腹に収め、いざ平松礼二の世界へ。

ときに、琴線というものはどこにひそんでいるのだろうか。或いは、色づく景色をしっとりけむらす秋雨のせいか?
びっくりしちゃうよ。泣いちゃうんだもん。
そこに至るまでに、圧巻の桔梗の群生や、おとぎ話の世界のような満天の星空や、まさにこの日のように雨によって薄銀に染まる紅葉の山や、次々心震わす絵にまみえてきたのに、展示室のL字に飛び出た壁の先に現れたその絵を網膜が認識したその途端、喉ぎゅーとなって泣いちゃうんだもの。理由は全然わからない。他にもうわっ好きだ!!という絵はいくつもあった。けどその絵だけは泣けてしまう。全然わからないけれど、ただ、非常に強く、やっぱり日本画が好きだ と思った。鏑木清方に惚れ惚れし、竹喬さんにうっとりし、鈴木其一に心射抜かれ、平松礼二の絵の前で泣く。日本画家以外にも好きな画家は沢山いる。しかし、わたしの心の琴線をなにより多くなにより強く弾くのは日本画なのだと、視覚感覚総動員で鑑賞しながらも、半ば放心しながらそんなことを思って歩いた。
新見美術館て素晴らしい。前には伊東深水や安野光雅さんもしてくれた。今回は作品点数もかなりあったし、よくこれだけのことができるものだと毎回思う。新見美術館大好きだ!

平松さんに泣かされたせいで(違う)見終わった時には午後いちのきしゃは出てしまい、次のきしゃまで約3時間。とりあえず新見を歩く。前日イル・リコッターロさんでごはんを食べたあと、ふと山に向かってのびる道がどこに続いているのか気になって、好奇心旺盛なお友達と往復1時間弱の山登りをしてきたのだけれど(ヒール3センチのパンプスで)、日頃の運動不足を解消するかのように2時間近くほっつき歩き、途中本を買って駅へ戻りきしゃの時間を待つ。

お肉屋さんのコロッケ、美術館。新見は、わたしの胃も心も存分に満たす、ああ、こういうのをパワースポットっていうんじゃないの。

 

 

とうとう
行ってきたとよー!!

行動範囲が狭く腰が重たいわたくしが実施中の、行きたいとこに行き会いたい人に会おうキャンペーン。もしかしたらこのために始めたものだったのではなかろうか。

本当に長いこと訪問を切望していた地に降り立つことになった11月末。きしゃに乗ってから4時間半。新幹線のお蔭でびっくりする程の速さで連れてきてもらう。改札を出ると「時間通りに着いたねー!」と笑顔で迎えてくれたのは、5月piatto nonoでの個展を遥か九州から見に来てくださった上田めぐみさん。そう、ここは火の国、肥後熊本!!同じ雑誌で漫画を描いていた上田さんと知り合ってから、行きたいなあと言うばかりだった熊本に、ああ遂に来てしもうたよ!

あまりに早く着いたもので、熊本にいるという実感もないまま上田さんの車で、行ってみたかった熊本城へ。西南戦争でも焼失せずに残ったという宇土楼の鉄砲穴などにはしゃぐ。そして場内の屋台で、熊本に来たら食べねばならぬものの1つ、いきなりだんご(紫芋バージョン)を購入。低血糖で目眩を起こす程の空腹状態のせいでは決してない激旨さ!後日、もっと買えばよかったと後悔する。
更に夕食は、「熊本食べなら」の太平燕(タイピーエン)。お店によっても違うらしいが、簡単にいうとちゃんぽんやラーメンの麺が春雨というご当地フード。今回のお店では季節限定・白舞茸とかにの太平燕を食す。あっさりとして上品。スマートで知的、物静かだがユーモアも解する50代男性という印象。他に、豚と蓮根だけの黒酢の酢豚などちょっとかわった料理も出てきた。
ごはんのあと、上田さんが温泉へ行こうと仰る。熊本には沢山の温泉があるのだそうで、上田さんのお住まいの近くにも温泉地があるのを知って驚く。1日目にして、熊本の豊かさに身も心も満たされ、あったかいお布団でぐっすり眠る。

2日目、天気予報は外れ小雨の降る中、わたしの海が見たいというリクエストにより天草へ。途中、頂上までみっしりとみかんの木に覆われた山がどこまでも続くみかんの産地・天水で、松田優作ばりの「なんじゃこりゃー!」を連発し、時々大雨に見舞われながら、天草でも南(西か?)の方、下田温泉に到着。ここでごはんを食べようとお店を探す。折しも温泉街は伊勢えびまつり開催中。今月オープンしたばかりというお店に入り、鯛のあら煮や(大好きだ!)その煮汁をかけた鯛そうめんという天草ご当地フード、緋扇貝や車えび、熊本中心部のものとはちょっと違うだご汁、鯛や生まれて初めて食べたかわはぎのお刺身など、今自分が天草にいるのが信じられない気持ちになりながら、様々な料理をたっぷりいただく。上田さんが岡山に来られた時には、全然色々お連れしなかったのに、天草なんて地図帳で見るだけだと思っていたところに連れて来ていただけるなんて・・・。
下田をあとにし、ぐるっと天草の上の方を海に沿って戻る。午前中の悪天候で波は高く荒海ではあったものの、海の圧倒的な壮大さに2人でうわーうわーと声をあげ、呑まれそうな高波への恐怖感と、伊勢えびまつりに参加できなかった後悔も消し去ってくれるような目の前に広がる海という存在にどきどきしながら、しばらくぼーっと眺め続ける。
天草の別の温泉に入り、夜は上田さんの好きだというお店で太平燕。このお店のはオーソドックスな感じで具もたっぷり。働き盛りで体力もあり、しつこさはなくて結構気も利く30代後半男性といったところか。
上田さんにおかれましては1日中運転をしてくださって、さぞやお疲れになったであろう2日目終了。

最終日、お昼(玉名ラーメン)を食べてから新幹線に乗ろうという予定で動く。いきなりだんごをお土産にしたくて、物産センター・道の駅巡り。そこで南関あげという熊本名物(ぱりっぱりの20センチ四方くらいの油揚げ)を買っていると、「南関あげを使った料理が食べられるとこがあるっちゃけど、ラーメンとどっちがよか?」と上田さんが言い終わる前に「南関あげ!」。わたしの大豆製品好きのせいで急遽南関あげの生産地・南関町へ。着いてみるとそこは巨大な道の駅。大量のお土産物に驚愕する。そして例の料理があるところとはなんとバイキングレストラン!その充実ぶりにまた驚愕。巻き寿司を海苔ではなく南関あげで巻いた南関あげ巻き、南関あげの入った茶碗蒸しや呉汁の他、揚げ物やスパゲティなどは勿論、地元野菜の蒸し物など野菜の料理も沢山。豆乳ソフトクリームの機械まである。ああ!毎日通いたかったよ!シロさんまだ食べると?と言われながら、おいしいものを胃に送り込み続けた。

上田さんのお蔭で、驚く程盛り沢山で本当に楽しい充実の3日間。でもまだ行きたいところが次々あって、上記南関町のいきいき村など絶対もう1回行きたいところも次々あって、どうしたらいい!ひと月ぐらい住まんといけんか!というくらい、すっかり熊本に惚れてしもうたと!もう毎月でも通いたい・・・熊本に出張とかないだろうか(一体なにで出張するのか)。

今回熊本に行こう!と決心できたのは、上田さんがこちらに来てくださったというのがかなり大きいけれど、ほんまに思い切って行けてよかったと心から思う。旅慣れた方には、なんちゅう大げさなと思われるのでしょうなあ・・・どれだけわたしが小心で出不精かが露呈してしまう形であるが、2012年を代表する大きな出来事の1つになった熊本旅でございました。絶対また行くっちゃけん!待っとってね!

 

 
 

 

   
     

 

 

 


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