ムツゴロウさんになれなかったよ

行きたいとこに行かなくちゃ、会いたい人に会わなくちゃが同時に叶った神無月初日。

チーズを作りパンを作り、羊と山羊を飼っている蒜山のカフェレストランがとてもよかったよと、お会いしたかった方が教えてくださったので、一緒にお昼を食べに初めてそのイル・リコッターロというお店へ。
店内はやわらかな雰囲気で、大きな窓から木々が見えるのがなんとも落ち着く。春など外のテーブルで食事をすればさぞや気持ちよかろうぞ。
さて、チーズのお店に来といてなんだが、昔からチーズが苦手で、しかしピザやグラタンの溶けたチーズは大好きで、わがままだ面倒くせえと嫌がられてきたが、piatto nono さんで溶けてないモッツァレラチーズが、タルマーリーさんでゴーダチーズが食せることを知り、このイル・リコッターロさんでリコッタチーズが食せることを知った。ウニ嫌いな人が、新鮮なほんまに旨いウニ食べたことないのと同じなんだと思いますとご一緒した方に言ったら笑っておられたが(なんでも笑ってくださるの)、パンにリコッタチーズのせてオリーブオイル(これがまた旨かった!)かけただけでなんでこんな旨いー?と不思議になる。
おいしいお料理のあと、別の方から是非にとお勧めされていたリコッタチーズのアイスをいただく。ご一緒した方はリコッタチーズのタルト。アイスは勿論おいしかったが、それを凌いで思わず唸ったのがこのタルト。だって甘くないんだもの!なんなら塩味まで効いていて、これこそわたしが求めていたお菓子ではないか!と大感激。あまりに好きな味だったもので、途中断りもせず もちょっと貰うとタルトのお皿に手を伸ばすという無礼を働きつつ、お茶を飲んでゆっくりしたあと、山羊たちの牧場を見られるとのことで教えていただいた道を歩いているとメェェェという声が!木の葉を食む白山羊たちに2人できゃあきゃあ喜び、わたし黒い山羊が飼いたいんですよねーとかほざいていると、その先の小屋からベエエエと野太い声も!羊ってあんな声低いの!?と驚き合う。柵の中に入れていただくと、近所の方のお土産に買ったパン(えーにおいがするから!)とチーズにみんながわーと群がってきた。パンたちを守りながら小さい山羊の顔を撫でていると、指を2〜3本口の中に持っていかれ、舐められたと思ったら人差し指を噛まれて流血(ちょっとね)。お店の方に噛まれた人初めてと驚かれる。予想だにしない出来事に2人で笑ってしまいながら、安易に黒い山羊飼いたいとか言ったからかと反省。あとでお店へ戻り指を洗うためホースをお借りしたら、消毒に絆創膏まで・・ご親切にありがとうございました。わたしが悪いのになあ・・・
平日でもお昼時は予約をした方がいい程の人気だそうだけれど、また他のお料理やタルトをいただきに是非伺いたい!山羊さんたちとも是非打ち解けたい・・・

折角蒜山に来たのだからどこか寄ろうかと、郷原漆器の館へ。郷原漆器は蒜山の伝統工芸。古い漆器やとてもいい形の匙、きれいな白漆の器など色々見せていただいていると、団体さんが来館。実はここへ来たのは初めてで、大変失礼ながら館があることも知らなかったので、みんなこういう施設があることをよく知っているなあと感心してしまった。

そのあと、館で地元の方に勧められた、Living in Arts Projectにも参加されていた平田敦司さんの作品展開催中のひるぜんワイナリーへ。座ったら動けなくなる程心地よいソファーで作品を堪能したあと、ソフトクリームを食べにジャージーランドへ。さすが蒜山、日が傾き風が出ると寒い。寒いと言いながらソフトを食べ秋桜を愛でる。
更にそこではかっこいいタケシとの出会いも。精悍な体つきに澄んだ大きな瞳。はじめは背を向けられていたが、タケシタケシと呼んでいると、ゆっくりこちらへ歩み寄ってくれた。黒く艶やかな長い尻尾をなびかせながら at ホースパーク。兵隊時代、馬の世話係を経験した祖父から、馬は本当に賢くて、人を見てこいつはつまらんと思うたら、バカにして言うことをきかんと何度も聞かされていたので、毅然とした態度で臨んだつもりだったが、おどかしてはいけないと優しくほっぺあたりを撫でていたら(山羊に噛まれたあとだしね。そして馬の歯がとてもでかいのをわたしは知っている)鼻であしらうというのを実際に表したが如く、顔で手を払うようにされて萎縮しながらも、ソフトほったらかしで何度かトライし、大好きな馬に触ることができて夢のような気分であった。まあしかし顔だけでも相当大きく、体つき・毛並みの美しさにも見とれるばかり。いつか乗れるようになりたいなあと言いながら、タケシとお別れする。

ご一緒した方とも沢山お話しできて、今日は1日楽しかったなあと帰りながら思い返していると、郷原漆器見て、ひるぜんワイナリー行って、ジャージーランドでソフト食べて、ひるぜん大根(50円)買って帰るってこれ、完全に蒜山ツアーの観光客じゃがん!と、1日といっても実際6時間程でこの思わぬ充実ぶり(同じ日に山羊も馬も触るやこ初めてよ)にちょっとびっくりしてしまった。
こういうのを時間の有効活用というのじゃないかしらんと1人で得意になっていたが、母に山羊に噛まれたと報告したら、さも忌々しげに、阿呆じゃなあ!と言い捨てられた。
いいのだ。まったく予想通りだよ。

 

   
     
足立さんに会いに。

島根の足立美術館に行きたいと母に言う度に、「あんた行ってないん」「行ってないわや」を繰り返していたところ、母加入のご婦人会の旅行で足立美術館に行くが行くかと言う。同行してもよいのかと問うと、ツアーなんじゃけん金を払やあ構やあせんがなとのたまうので、厚かましくも参加することに。
前の週、かわいい姪甥と戯れすぎたのか、いやその前からどうも調子が悪かったのを明らかに調子が悪くなった状態で更に休まれぬ用事へ出掛けたもので、完全に風邪のような症状で倒れ、結膜炎を併発し、行けるのか?キャンセル料全額か?とよろよろしていたが、なんとか当日には回復。
長年夢見た足立美術館では、大好きな土田麦僊や初めて見る榊原紫峰らの日本画が数多く並び、横山大観のコーナーでは、大観といえば富士山というイメージばかりあったのが、『紅葉』のように色鮮やかで美しく迫力のあるものや、墨絵のような中に青が生きたちょろっとのぞくトカゲ(家守?)がかわいらしくも郷愁を誘う作品などに触れ、いかに自分が大観を知らなかったかを知る。
新館では、魯山人さんや河井寛次郎の作品を見られ、目立たぬように参加しようと思っていたのに、見終わるのがいちばん最後という大変目立つことになってしまったが、お庭といい展示作品といい、来ることができて本当によかった。

そのあとは、牡丹で有名な大根島や境港のおさかなセンター、お菓子の壽城とザ・お土産購入コースであったが、おさかなセンターで大きな活きズワイガニの動く様や巨大な口をばがーと開けた鮟鱇の姿を見られて楽しかった。

今度はゆっくり、美術館内のお茶室なんかにも入ってみたいものだなあ。

     
そうだ
美術館に
行こう

姉が、県立美術館でやっている現代美術展をどうしても見たいと言う。わたしも気になっていたし、他の用もあったので姉の住む所まで出てゆき、姪甥と共に展示を見に行くことになった。
小さいのをわたしがおんぶし、もう1人の小さいのをベビーカーにのせる。他のちょっと大きいのには、とにかく触るな近付くなで終始し、学芸員さんにも完全にマークされてかなり肩身は狭かったが(お1人だけ「触ってないですよ。いい子で見てましたよ」と言ってくださった方がいて救われた・・・)とてもおもしろく、人って色んなことを考えて色んな表現をするのねと至極当たり前なことを改めて思った。
本物のL字フックだけがついた画面に、鍵などの「影」だけがまるでフックに掛かっているように描かれている作品は、なんだか怖い感じさえするがとても好きだったし、唯一触ることのできる金沢健一氏の作品は、丸い鉄のテーブルの天板が稲刈り前に水を抜いた田圃のように大小にひび割れていて、その上に置いてある木の玉や胡桃を天板に落としたり転がしたりすると、高い低いの音が出て大変楽しく、子供たちともしばらく遊んだが、室内展示を鑑賞中も時々そのテーブルの音が聞こえてきて、あ 遊んでいるとなんだかふふふという気持ちになった。
ゆっくりはできなかっただろうけど、子育て中で美術館などなかなか行けない姉が、見たかった展示を見られてよかったなあと思った。

夜にはたこ焼きをしてくれ、わたしは初めてたこ焼きをくるくるしたのだが、美しい球体を作るのに苦心するのも楽しく、家でたこ焼きをするのはいいことだなあと思う。
小さい甥にたこ焼きを食べさすのが至福の時でありました。
そして食べ過ぎる食欲の秋。

 

大山に
いだかれる

充実の蒜山ツアーに味を占め、今度は大山の麓にあるコウボパン小さじいちがごはんもおいしいということで、またも教えてくださった方とお昼をご一緒しにいそいそ出掛ける。
大山は寒いはずだと思っていたけれど、お天気もよく外にいたら暑いくらいに。おいしいパンにおいしい大山バターをつけ、パンをおかわりして、スープやおかずをいただいて、お茶を飲んで、だって大変居心地がよい上にお話が尽きないものだから、ついつい長居してしまいました。全種類いただきたいくらいなパンを選りに選っておいとまする。

これまたどっか行く?ということになって、植田正治とか近いよなんて仰るもので、行く行く!と飛びついた植田正治写真美術館
植田正治といえば、砂丘にデザイン的に人やものを配置してという作品がすぐに思い浮かんでいたが、そうではない、ただそこにあった人の居る景色を撮ったようなものや(正治さんご本人の話では、被写体にカメラを意識させて撮るのだそうですが)色々な場所色んな子を、中心に子供を1人据えるという同じ構図で撮られたものなど、ああなんて素敵なのだろう、なんでこんなに素敵なのだろうと思うものばかり。ご一緒した方曰く「愛があるから」。愛かー・・・と深く感じ入りながら堪能した。大山の姿を楽しめるスポットとしても有名なこの美術館。もう5年以上前から行きたい行きたいと思っていたのが、いわばことのついでにあっさり叶ってしまうという不思議。来るべき時は今だったということか。

で、まだ時間あるねと更に来るべき時は今だったのか!?というスポットに。本当に全然知らなかった。こんな施設があるなんて。その名は大山トム・ソーヤ牧場。カンガルーとか居るんだよってそりゃ行かんわけにはいかんですよー!
入ってみると、大勢の山羊が羊やミニ豚と暮らすめーめーランドや(ほぼみんな寝ていた)、色んな種類の犬のいるわんわんランドが目に飛び込む。めーめーたちの先には柵の中を歩き回るカメの姿も!ケヅメリクガメの前足のかわいらしいこと・・・かなり低い柵なのにこの人たちは出れんのんだねと言いながらバリバリ白菜を食べるのを見ていたら、隣のカンガルーランドでふれあいタイムが始まるという。折角だからと係の方にエサの葉っぱをもらって柵の中に。みんな日なたぼっこでまったりしていたが、子供に追いかけられて逃げる姿はこれこそまさにカンガルー。うす茶色の毛はふわっふわ。昔オーストラリアに行った叔父さんのお土産のコアラのぬいぐるみの毛がカンガルーのだと言われたが、そのコアラと同じ手触り・・・。のそのそと歩く姿も初めて見たが、尻尾や後ろ足の長さに改めて驚く。
わんわんランドを近くで見ていると、もう5分程でふれあいタイムが終わりますがよかったら入られませんかと言われ、素直に入る。20種くらいはいるだろうか。よく人に慣れていて、ラブラドールなど少し大きな犬たちに挟まれて慌てる。山羊でも犬でも大体黒いのが好きなのだが、心奪われたのはチャコールグレーのふわふわな毛並みを持つニューファンドランドという犬。水難救助犬としても活躍するらしい。やれやれという感じで横たわったそばに座り込み、わああわああとなで続ける。わりとお年なのか大人しく、初めて触ったシェパードをはじめ、大抵の犬は触らせてくれるが、ダルメシアンだけはあちこち走り回り、とうとう触れることなくタイムアップ。
更にアルパカ舎では、のんびり座って昼休憩中の2頭のアルパカ・さくらとやよいに、頼むから立ってくれ1度でよいから触らせてくれと懇願するも聞き入れられず。ふれあいを諦め、いかにアルパカの毛がぬくいかを力説しながら山羊の乳のソフトクリームを食べる。正直に言おう。1口食べて、ちっともおいしくないと思った。な、なんだこれ、山羊の乳ってこんなんか?なんとも表現の仕様がないが、今まで食べたことのないソフト。なんだろう、しつこくはないが紙のような不可思議な味・・・がしかし、その違和感も7口程で全く何も気にならなくなり、むしろ何をおかしいと思ったのかわからない程平気で食せる。山羊乳マジック?きっと次に来た時もわたしはこれを選ぶだろうとさえ思えるのがまた不思議。
そう遠くない所にこれだけ色んな動物がいて、なぜここを知らなかったのだろう。しかも年中無休ときた!ふ、冬はどうするのだろう・・・リピート必至(アルパカに触らんといけんし)のトム・ソーヤ牧場をあとにし、大山の登山口近くを通るコースで帰ることに。

気が付くと車は大山をすぐ真下から見上げるような場所に。紅葉真っ盛りの美しさで、黄・緑・茶色の中に映える赤と頂上の灰色、その向こうに真っ青な空。大山てこんなにきれいだったんですねー!と大騒ぎ。
大山て、行っても見るとこないしなーとこぼしていた自分に恥じ入り、大山及び鳥取県に要謝罪のこの充実ぶり。小さじいちさん以外ノープランで、行ったの全部初めてのとこ・・・あまりにも大山を侮っていた。ご無礼お許しいただきたい。大山寺もいいよと言われちゃあ、また来るしかないではないかー。過疎化が進んでたって、トム・ソーヤ牧場はあるし大山はきれいだ。人なんて所詮色んなもののほんの一部なのであるからして。

さて、この日も賞味7時間。この間しっかりお話もしてます。
本当に時間の使い方がお上手ねー。家にいると下手クソなのにねー。

 
満喫県南
ツアーズ

ただわたしが一緒にどっか行きたかったもので、Fabrique451さんや451BOOKSさん気になるなーと言ったのを、しめた!とばかりに強引に決めてしまったようなもんで、忙しいのに悪かったかなあと思っていたら、小梅ちゃん見たいんだよねーと言われ、わたしもじゃ!というわけで今月5つ目(中旬に津山のM&Y記念館に行ったので)の美術館訪問を含む県南ツアーへ。

まずは同行者スターちゃんのリクエスト林静一展at岡山シティーミュージアム。70年代80年代の作品から数年前に描かれた日本画、キャラクターデザインした源氏物語のセル画や絵本の原画など、200点を超す作品数と、そのタッチの多彩さに圧倒される。繊細な女性の絵で知っている人が多いと思うが、モード・都会的・奔放さを感じさせるものも多く、着物からドレス・水着や下着姿・ワンピースやセーターにカーディガンなどそのファッションのバリエーション、おしゃれさにも溜め息が出る。2人共腹を減らしながらくまなく鑑賞。来てよかった。見てよかった。自分の絵のまずさに打ちのめされるけれど、これも見るべき時は今だったのか。

およべうどんでお腹を満たし、わたしは久々のスターちゃんは初の Fabrique451さんへ。土曜日だからかCAFE Zさんはいっぱい。ごはん食べてきてよかったと言いながらFabriqueさんに入ると、こちらには目の毒 基 目の宝にして財布の中身の誘惑者がいっぱい。まあ誘惑されたって、ないものは連れて行かれようもないけれど。いつも素敵と思うのはフランスのボタン。今回もピンクのボタンに惹かれたけれど、絶対上手に使えんだろうがと自分に叱られ眺めるのみ。美しいガラスのお皿にも後ろ髪引かれたが、その前に家の食器棚片付けーやと再度叱られる。

Fabriqueさんから丁寧に道を教えていただき、続いて451BOOKSさんへ。玉野というと遠いい!と思ってしまうがFabriqueさんからはわりと近くて、これなら次からも行けるかなあと思える。BOOKSさんへは今回でやっと2回目。黙したまま他のお客さんと場所を譲り合ったり、床にへたり込みながら大量の本を物色。途中お茶をいただくと、そこが大変居心地がよく、話をしながら本を見つめているだけで何時間も座っていられる気持ちになる。が、それはご迷惑なのでやる気を出し本の捜索。スターちゃんはおもしろいフリーペーパーなど見つけるのが上手。存分に楽しみ、秋の日はつるべ落としを実感しながら児島湾を渡り北上の途へ。

詰め込みすぎかと思われたスケジュールもうまいこと運び、帰りにおいしいかき氷を食べるという特典も。
大変よい1日であった。

それにしても行きたい美術館がまだ少なくともあと2つはあり、来月もわたしの美術館巡りは続きそうである。

   
     
シリゲ!

皆さまシリゲをご存知でしょうか。
蒜山の伝統工芸で、薄い薄い紙を彫り(シリゲでは切ることを彫ると言うのだそうで)1枚の絵を描くもの。お盆のお祭りの際、灯籠の下にさげられるので、しり(下)にさげるからシリゲと言うのだとか。
その技たるや超絶で、できるものなら1度挑戦してみたいと思っていたら、近くで講座があるという!すぐさま飛びつき体験することに。
いちばん苦労したのは中心の絵を囲むツリという背景部分。紙がちぎれるのが怖くて線が太くなってしまった。細い程中の絵が引き立ち、全体が美しく仕上がる。
講座で2時間家で2時間、約4時間でなんとか完成。鉛筆(カッター)の持ち方が悪いため、親指の爪が人差し指に食い込み、親指の付け根の皮がむけ、背中が大層痛くなったが、その達成感ったら尋常ではない。こりゃ1回ではやめれんぞとシリゲの虜になってしまった。

ちなみにシリゲの発音は、「おかゆ」や「こども」と同じかと思っていたら、先生によるとどうやら「花火」や「トルコ」と一緒のようです。

 

 


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